和歌山県立医科大学第1外科

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乳腺疾患の診断と治療

■診断

 乳腺疾患の診断は、視触診に始まり、超音波検査、マンモグラフィを行い、この時点で何らかの異常を認めた場合に細胞診、更には組織診へと診断を進めていきます。従来は、組織診といえば、局所麻酔下に腫瘤を摘出する切除生検が行われていましたが現在では、針生検が主流となり、更にマンモトーム生検が先進施設で導入されるようになっています。当科でも超音波ないしマンモグラフィガイド下にマンモトーム生検が可能です。マンモトーム生検の導入により、診断を目的とした切除生検を行うことは、殆どなくなりました。つまり、乳房に傷を残す事なく乳腺疾患の最終診断が可能となっております。

■乳癌検診

 和歌山市、和歌山県の両方で乳癌検診にマンモグラフィが導入されました。当科のスタッフが実際の検診の場に赴くことは殆どありませんが、マンモグラフィの読影は当科のスタッフが中心となっております。

■治療

1. 乳房温存治療
 早期乳癌の標準治療は、乳房温存療法です。また早期でない場合も後述する術前化学療法を行うことにより高率に乳房温存療法が可能となります。乳房温存治療の基本は、乳房を全て切除するのではなく、癌とその周囲の正常組織の一部を切除し、温存した乳房に放射線照射をするという治療法です。また美容効果は劣りますが、乳頭のみ温存する乳頭温存手術という治療法もあります。当科では、術前化学療法の積極的導入により、乳房を全て切除してしまう乳房切除手術の比率は、現在1割以下となっています。

2. センチネルリンパ節生検
 癌が最初に転移を起こすリンパ節をセンチネルリンパ節と言います。このセンチネルリンパ節を正しく同定し、詳細な病理学的検査を行うことで腋のリンパ節を切除しなくてもよくなるという治療戦略が世界的に注目を浴びています。当科でもセンチネルリンパ節生検を積極的に行い、現在では手術を行う患者さんの98%に行うようになっております。またセンチネルリンパ節に2mm以下の微小転移を認める場合やリンパ節に明らかな転移があっても次に述べる術前化学療法で完全にリンパ節に転移した癌が死んでしまっているような場合にもリンパ節の切除は行っていません。以上のようなセンチネルリンパ節生検の適応拡大に伴い当科では現在手術を行う患者さんの78%でリンパ節切除の省略を行っています。

3.術前化学療法
 一般的には、乳房温存療法の対象とならない3cmを超える大きさの乳癌に対して術前化学療法が行われています。しかしながら、術前化学療法で癌が完全に消失するのは、若い人、癌の大きさが小さい人、ホルモン受容体が陰性の人であることが判明しています。また閉経前でホルモン受容体が陰性の患者さんは、手術後に抗癌剤治療を行うことが一般的であります。以上のような背景のもとに、当科では、閉経前でホルモン受容体が陰性の患者さんの場合には、癌の大きさが3cmより小さくても術前化学療法を行っています。これまでに術前化学療法を受けられた患者さんの数は、そう多くはありませんが3割以上の比率で癌細胞が完全に死滅(つまり術前化学療法のみで治癒)しているのを確認しています。

4.ラジオ波熱凝固療法
 ラジオ波熱凝固療法は、2004年4月から肝臓癌に対して保険適応が認められました。この治療法は、電磁波の一種であるラジオ波を用いて癌を熱凝固してしまう方法です。癌は、42-43℃以上に加温されると急激に死滅することが解っています。また60℃以上になると蛋白変性が生じ、どんな癌細胞も生きていくことが出来ません。ラジオ波熱凝固療法では、60℃以上、場合によっては90℃以上に癌細胞を加温することが可能です。欧米では、このラジオ波熱凝固療法を乳癌に取り入れようとする試みがなされています。この治療の利点は、なんといっても乳房に傷がつかない所にあります。前述したセンチネルリンパ節生検と組み合わせると、腋に2-3cmの小さな傷が残るだけで乳癌治療が完了することになります。当科では、2004年5月時点で20人以上にラジオ波熱凝固療法を行い、全員良好な結果を得ております。勿論、より多数の患者さんでの治療成績を検討する必要がありますが、数年以内にこの治療法は、乳癌治療の重 要な位置を占めることになると思います。またセンチネルリンパ節生検、術前化学療法と組み合わせることで「切らずに治す」という治療選択肢が現実化しつつあります。当科では、2-3年以内に閉経前の乳癌患者さんの半数は、切らずに治せるようになると考えています。

5.ビスホスホネート療法
 乳癌は、骨転移の多い癌です。多くの患者さんは、癌細胞が骨に飛んで、癌細胞自身が悪魔のように骨をバリバリと食べるから骨の痛みが出る、と誤解されていると思います。実は、癌細胞自体は、基本的に骨を食べることが出来ません。癌細胞から出るある種の指令によって破骨細胞が活発化し、骨をバリバリと食べるのです。つまり破骨細胞をおとなしくさせることが出来れば骨の痛みも緩和されるし、場合によっては骨転移自体も小さくなるのです。また手術後に、しばらくの間、破骨細胞をおとなしくさせると骨転移自体が起こらなく可能性もあります。この破骨細胞をおとなしくさせる新しい治療法としてビスホスホネート療法があります。この薬は、海外では、その骨転移に対する有効性が広く認識され、乳癌骨転移の標準的治療薬になっています。日本でもビスホスホネートは、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症治療剤として発売されていますが、乳癌骨転移に対しては、これまでは保険適応がありませんでした。しかしながら、海外で標準的治療となっているのに日本で使えないのは問題であるということで、厚生労働省の通常のステップを踏む事なしに2004年5月21日に乳癌骨転移に対する保険適応が認められました。書類申請などで実際の保険適応になるのは少し先になりますが、日本でもようやく骨転移に苦しめられる患者さんがビスホスホネート療法の恩恵に浴することができるようになったのです。当科では、乳癌骨転移に対するビスホスホネート療法をこれまで積極的に行って来ました。保険適応となったことで今後更に多数の患者さんにビスホスホネート療法を行っていく予定です。

 

 
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