和歌山県立医科大学第1外科

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心臓手術について

 日本では毎年5万人程度の方が、心臓手術を受けておられます。
最近では、手術の成績も良くなり、手術で亡くなる方は数%になっています。しかし、いくら手術の必要性を説明されても、いざ自分が手術を受ける立場になると簡単に決められないと思います。入院期間や社会復帰の可能性、費用や家族の付き添いの問題など考えることがいくつもあります。そのために、手術のタイミングが遅れては困るので皆さんに知っておいていただきたいテーマとして今回は、緊急手術と高齢者の手術について触れたいと思います。

 心臓手術にも多くの種類があり、手術の危険率に若干の差はありますが、最も危険率が高いのは緊急手術です。大動脈瘤の破裂や、大動脈の壁が避ける解離ということが起ると、出血によるショックで、救急車や最近ではヘリコプターで運ばれてこられます。血圧が低くなりすぎて本人は意識も薄れているため家族に説明して手術することになります。夜間に手術の準備をして、輸血を集めたりして手術しなければなりません。このような手術でも、9割の患者さんは、無事退院できます。しかし、無事退院できたといっても、手術を予定して安定した状態で手術した患者さんとは多くの点で違いがあります。

 緊急手術では、手術前のショックのために、尿が出ない腎不全になって血液透析を必要としたり、腸が壊死したために人工肛門を作らなければならなかったり、いくつかの合併症を起こす方が少なくありません。手術時の輸血の量も違いますし、入院期間が、普通なら手術後2週間もあれば退院できるのに、2ヶ月くらいかかることもあります。心筋梗塞に対する冠動脈バイパス術では、どの血管を使ってどこにつなぐかを決めますが、安定した状態での手術ではバイパスした血管が長持ちする方法を考えますが、緊急手術では時間的余裕がなく、その場を乗り切ることに主眼が置かれます。このように緊急手術と予定手術では随分違いがあります。痛みや苦しさが遠のくと、いくら検査の結果を説明されても手術を決断するのに躊躇さる方は少なくありませんが、自分の病状を十分理解して判断することが重要です。

 次に、高齢者の手術についてです。一般に、70歳以上を高齢者としています。しかし、最近では、60歳代の患者さんよりも70歳代の方が多く、80歳以上の方も1割以上おられます。何歳まで手術するかという問いには答えはありません。本人が手術を希望されれば断ることは滅多にありません。寝たきり老人や、認知症(痴呆)が強い場合は、家族と相談してどうするか決めています。

 以前は時々新聞に、この手術では本邦最高齢の成功などの記事がよく出ました。これはあまり意味がないと思います。ちなみに県立医大では、大動脈瘤では92歳、冠動脈バイパス術では89歳、人工弁置換術では87歳が最高齢ですが、皆様元気に退院されています。
80歳以上の方でも手術危険率が若い方と大きな差はないということを知っておいていただきたいと思います。

 費用については、幸い日本では各種の医療保険制度が整っていて、老人医療のほかに、更生医療などの制度があり、個人負担はあまりありません。付き添いについては、患者さんの精神的安定という意味で付き添ってあげることは大変良いことですが、必ずしも付き添いが必要というわけではありません。

 心臓の病気は以前は、リウマチ熱による弁膜症などが多かったのですが、最近は生活習慣病として動脈硬化による弁膜症や、大動脈瘤が増えています。一番大事なことは、食生活や適度な運動など生活習慣病を予防することですが、それでも病気が進行し手術が必要といわれたら、最近は医療も進歩してほとんどの方が元気に復帰でき、手術前より元気に長生きできることを知っておいてください。

(この原稿は、2005年1月30日の毎日新聞に掲載されました。)
005年1月30日の毎日新聞に掲載されました。

 

 
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