和歌山県立医科大学第1外科

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冠動脈バイパス術について

■冠動脈バイパス術に用いる血管

 バイパス術という言葉が示すように、元々あった血管とは別の血管を用いて狭くなったり閉塞した部位より先につなぐ手術です。冠動脈は通常、2mm程度の直径なので、このような細い血管をつなぐ場合、人工血管ではすぐに閉塞してしまいます。そのため、本人の身体のどこか別の血管を採取して、冠動脈の吻合に使うことになります。バイパスに用いる血管のことをグラフトと言います。

 来、冠動脈バイパス術に用いられるグラフトは、下肢の大伏在静脈と胸骨の裏にある内胸動脈が一般的でした。両方ともに現在でも広く用いられていますが、バイパスしたい部位が沢山ある場合、それだけでは足りなくなってしまいます。そのため、最近では胃の血管(胃大網動脈)や腕の血管(橈骨動脈)を同時に使用することも多くなっています。それぞれの血管は、採取や吻合のしやすさ、開存性、採取できる長さの問題などで長所短所があります。また、下肢静脈瘤や胃の手術後などでそれらの血管が使えない方もいらっしゃいます。

 内胸動脈が長期の開存性などからバイパス手術に最も適した血管と言われていますが、左右の内胸動脈を用いても足りない場合も多く、個々の患者さんにとって良いと思われる組み合わせで手術を計画します。

■低侵襲手術

 腹腔鏡や胸腔鏡を用いた内視鏡手術が一般的となり、低侵襲手術の考え方は外科全体で広まってきました。低侵襲手術とは普通は小切開による手術を意味しますが、心臓手術の場合、身体にとって最も侵襲的なのは体外循環です。

 他の外科手術に比べて、心臓手術の歴史が浅いのは、拍動していることと、切れば大出血することが、手術をやりにくくしていたわけです。それが人工心肺を用いて体外循環を行い、特別な方法で一時的に心臓を停止させて手術することが比較的安全になったおかげで心臓手術が広まったのですが、成績が良くなってきた現在、体外循環そのものの身体への悪影響が問題視されてきました。

 弁の手術や先天性心疾患では心臓内部の修復が必要なため、体外循環は必須ですが、冠動脈手術は心表面の手術であるため体外循環を必ずしも必要としません。冠動脈バイパス術の黎明期は体外循環の技術が未熟なため、心拍動下にバイパスが行われていた経緯もあります。そこで最近は体外循環を用いず、心拍動下にバイパスする手術が徐々に広がってきました。

 この手術方法を、オフポンプバイパスとか、OPCABと言います。覚醒や術後の回復が早いこと、輸血を要する頻度が減ることや経済的な利点などが挙げられています。従来の体外循環・心停止下に行う手術より技術的に難易度が高いので、沢山の吻合を要する患者さんには応用しにくい面もありましたが、最近では手術をやりやすくする器具の改良や、技術の進歩、経験を積み重ねることなどにより、沢山の吻合を要する患者さんにも応用できるようになりました。

 手術の危険度が高い患者さん、例えば高齢者や心臓以外の肺や腎臓などの機能が低下している方、脳梗塞の既往のある方などには、特にこの手術の利点が多いと考えられます。ちなみに第一外科では、昨年度は冠動脈バイパス術の2/3の方はこの方法で手術しました。

 

 
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