和歌山県立医科大学第1外科

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自然気胸の治療

■自然気胸とは何か

自然気胸とは何か 胸腔内に空気が溜まり、肺が縮んでしまった状態を気胸といいます。このうちで、特にはっきりした原因(例えば交通事故で肺を傷つけたとか)が無いのに突然発生するものを自然気胸といいます。背の高い痩せ型の男性に多く発生します。20歳前後と60歳台に発生のピークがあります。
 人間の肺は軟らかいスポンジが中につまったゴム風船のような構造になっています。空気を入れて膨らませておかないとすぐに縮んでしまいます。このゴム風船を大きな瓶の中に入れて、瓶と風船の間に隙間が無くなるまでいっぱいに膨らませた状態を想像してください。膨らんだら、瓶の入り口と風船の首の周りを貼り合わせて空気がもれないようにします。これで、風船の口は開いているのに、息を吹き込んで膨らますのを止めても、もう風船は縮むことはありません。人間の健康な肺はこんな状態になっています。
 風船を肺とした場合、瓶に当たるものを胸郭と呼びます。胸郭は肋骨やまわりの筋肉、横隔膜などでできていて、中に肺を納めています。人間の胸郭は瓶とは違って大きさを自由に変えることができるため、中に入っている風船の大きさも変えることができます。このとき、風船の入り口から空気が出入りします。これが呼吸にあたります。 瓶の内側の空間を胸腔と呼びます。この胸腔には普段は肺がいっぱいにふくらんでつまっていて、実際には隙間がありません。しかし、風船(肺)の表面に穴があくと、肺と胸壁の間に空気が漏れ出て溜まり、肺が縮んで呼吸ができなくなってしまいます。これが気胸です。

■症状は?

 息苦しさ(呼吸困難感)や胸の痛みなどが突然起こります。咳がでることもあります。症状の強さは様々です。一般に、気胸が発生したときに強くでますが、そのあと軽くなっていくことがあります。また、緊張性気胸という重症の気胸の場合には、息苦しさがだんだん強くなっていくので、緊急処置が必要になります。上記のような症状を感じたときに、医療機関を受診して胸のレントゲン写真を撮ってもらえば、すぐに診断がつきます。

■何故起きるか?

何故起きるか? 肺の表面に、脆くて破れやすいブラ(またはブレブ)という、写真に示した袋のようなものができ、これが破れて空気が漏れることによって発生します。このような袋があるからといって、必ずしも破れるわけではなく、破れる原因は別にあると考えられています。この原因のほうは、まだよくわかっていません。

■治療方法は?

 穴が小さいときは、肺から空気が少し漏れるだけで、あまり肺が縮むことはなく、安静にしているだけで自然に治ってしまう場合もあります。しかし、このように治療をしないでおくと、再発する可能性がかなり高いことも知られています。
自然気胸の治療は、まず胸腔内に溜まった空気を抜いて肺を膨らませることから始まります。色々な方法がありますが、通常は、胸に空気を抜くための細いゴムホースのような管(胸腔ドレーンといいます)を挿し込み、空気を抜くための特殊な機械につないで肺を膨らませておきます。しばらくすると、肺の表面の傷が治って穴が塞がるので、その後で胸腔ドレーンを抜きます。この治療方法を胸腔ドレナージ法と呼びます。この方法は簡単で患者さんの負担も少ないのですが、再発する確率がわりに高いこと(30%との報告があります)、穴が大きいと治らない場合がある、というのが欠点といわれています。
 再発の原因は、ブラという、破れやすくなっている部分が残ったままになるからです。従って、再発を防ぐためには、これを手術で取り除くことになります。また、ブラに開いた穴が大きくて塞がらない場合にも手術が行われます。手術は、胸腔鏡を用いて行われます。手術を行えば、再発の確率は1/6以下に低下するといわれています。
 何らかの理由で手術ができない場合には、胸腔ドレナージ法のみで治癒を目指します。しかし、胸腔ドレナージ法のみでは不十分なこともよくあります。この場合、手術に代わる方法として胸膜癒着術が行われます。
 気胸は、肺と胸郭の間の隙間(胸腔)に空気が溜まることによって生じます。通常は何も無いこの隙間に空気が漏れて隙間が広がると肺が縮みます。そこで、肺と胸郭の間を接着(癒着)させて、空気が漏れる隙間を無くし、肺が縮まないようにしてしまいます。実際には胸膜癒着剤という薬を胸の中に注入することで治療を行います。胸膜癒着剤には色々な種類のものがあり、症例によって使い分けされています。

■難治性気胸に対する希釈フィブリン糊胸腔内大量注入療法

 若年者の場合とは異なり、高齢者の気胸では、多くは長年の喫煙のため高度に進行した肺気腫など、肺自体が障害されているために起きます。したがって、自己の治癒能力が低く、胸腔ドレナージだけでは治らないことがよくあります。かといって、肺機能が悪すぎたり体力が十分でなかったりで、手術もできないこともあります。このような患者さんには胸膜癒着術が選択されます。一方、通常の胸膜癒着剤は、肺や胸郭の表面の膜(胸膜に刺激を与えて治癒力を促進させて治すものですので、このような治癒力自体の低下した患者さんでは適応に限界があります。そこで、フィブリン糊という血液製剤を胸腔内に注入して治癒させる方法が考え出されました。
 フィブリン糊というのは血液中に存在していて傷を治す働きをする物質から作られた薬です。これを胸腔内に注入し、肺にできた傷を強制的に塞ぐことによって気胸を治癒させます。
手術をせずにこのフィブリン糊を肺にできた傷にうまく塗り付けることが、以前は技術的に困難であったのですが、我々の教室の木下貴裕Dr(現,南和歌山医療センター胸部心臓血管外科部長)が薬剤の調整方法を始めとして様々な技術的改良を施した結果、治療成績を大幅に向上させました。これまでのところは、手術不能の難治性気胸患者で96%の治癒率が得られており、再発も手術療法に匹敵する低頻度となっています。我々は、この方法を「希釈フィブリン糊胸腔内大量注入療法」と呼んでいます。

 

 
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