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DIARY

医師日記

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2023年11月1日の日記|上松 耕太

『新幹線、乗り継いで、仙台、学会』

仙台に20年ほど前に住んでいた。当時、仙台の人口は100万、その後微増し、2020年には約110万人となった。人口減少の日本で、仙台のような地方中核都市の人口は増えているが、110万が頭打ちになり2030年から減少すると予測される。東京の大きな駅周辺では、都市開発が進み、さらに高いビルが建設中だったり、すでにあったりと失われた20年とは?成長戦略というバベルの塔。新宿駅西口はビルが密集していて、ビルの直下に地下鉄の駅があるにも関わらず、静かに小田急百貨店が解体され新たな高層ビルが建設される予定だ。静かに粛々と行われる破壊と再生、莫大なお金が投入されていることもさることながら、リスクを負って解体、建設を実行する方々が目には留まりにくいがいらっしゃり、時にそうした現場での事故のニュースを見聞きし、実際病院に勤務していると受診、搬送される方もいらっしゃる。お疲れ様です。ご安全に。

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仙台駅前には、高いビルはあるが20年前と違いは感じない。成長戦略、経済成長では衰退だが、人口減少の日本での都市開発に無理がある。断末魔。都市開発、駅前に高層商業ビルを建てることには限界があるから、古い街並みを維持しつつ再開発する。いわゆるレトロな街並み。函館の街には古い煉瓦づくりの建物や日本正教会の木造の教会があった。

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松山駅は自動改札機がなく懐かしい風情の建物だった。市内は路面電車が走っている。函館にも路面電車は走っている。路面電車があるとレトロ感が出るのが不思議。
和歌山から仙台へ関空または伊丹から飛行機、くろしお→東海道新幹線→東北新幹線を乗り継ぐ鉄道経路、それぞれ紀三井寺駅から4〜6時間と6〜7時間で飛行機は乗っている時間は短いが空港へのアクセスと待ち時間が意外と長い。値段は、航空券は購入時期の変動が大きいが、鉄道はその変動が少ない。航空券の値段変動は株以上で少し疲れる。直前に購入するとなると鉄道のほうが3〜5割ほど安かった。東海道新幹線は分刻みの運行で、くろしおの運行にあわせ比較的自由に出発時間を決められるから予定の決めにくい時に有利だ。くろしおは1時間おきに運行されている。以前は紀三井寺の駅で乗車券、特急券が購入できたが今は和歌山駅で購入する。ネット化されても、みどりの窓口は意外と混んでいて、窓口で対応してくれる駅員さんがテキパキと切符を手配してくれるとなんだかテンションが上がる。14時50分のくろしおに乗りたい、14時45分になりまだ前に一人いてその人の後に自分の順番が回ってきた14時46分。3分の間に駅員さんがタッチパネルで操作し支払いを済ませる。ミッションインポッシブル、トムクルーズ。そんな時でも冷静に対応してくれる駅員さんに安心する。彼らも無理な要求に慣れている。無理しなくても社内で乗車券、特急券は購入できるが、自動改札機は通れない。
くろしおは、和泉山脈のトンネルの中は電波が悪くなる。5分ぐらい通信が悪く病院からの連絡が受けられない。新大阪からの東海道新幹線は、のぞみの本数も多く安心感がある。10分刻みで運行されている東海道新幹線N700系はAdvanceからSupreme へversion upされた。N700Sの中は当初宇宙船みたいだった。この車両が、このスケジュールでほぼ事故なく運行されていることは奇跡、頑張りの賜物です。ありがとうございます。
JR東海。音速、光速を越えるのぞみに乗り2時間半ほどで東京駅へ到着。リニアモーターカーが完成すると東京-新大阪間が1時間。驚!驚!驚!
静岡県がリニア建設に批判的だが、元々静岡県とJRは仲が悪いらしい。静岡県知事は京都出身、軽井沢在住らしい。批判の理由が理解しづらい。新幹線の車窓から見る、街並み景色を見ると古の東海道が想像でき感慨深い(東海道五十三次)。都内に入ると新幹線はスピードをおとし東京駅へゆっくり到着する。青と白のcoolな東海道新幹線から、野生的な緑色の東北新幹線へ乗り継ぐ。蝦夷の森を颯爽と飛び交うE5系はやぶさで仙台へ、東京から芭蕉が40日かけた距離を、時間短縮が美徳となった我々は1時間30分程度、東京-仙台の時間距離感は近い。20年前、妻が東京から仙台に頻繁に訪ねてきてくれました。感謝。Obrigado!! ありがとうございます。

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仙台の地下鉄で学会会場の国際センターへ向かった。国際センター近くの川には熊が出るらしい(九州には熊はいない)。熊に遭遇しないように破裂音(強く手を叩く)を出しながら歩くと良いらしい。
小児心臓血管外科の演題、セッションが少なかったので成人手術の話を聴いた。まず、B型慢性大動脈解離に対する早期のステント治療の有用性(破裂や臓器不全に対しては発症直後、そうでなくとも14日でステント治療の介入が統計上有利、あくまで統計上の話preemptive TEVAR etc.)、10000例  /年を越える経カテーテル大動脈弁置換の妥当性(体の大きい欧米人を対象に作成されているデバイスを日本人に移植することは多方面で不利であるのではないだろうか?1つのデバイス400万以上の高額医療費、430万✖️10000で430億円/年、40兆円を超える医療費の中では微々たる支出か)、大動脈弁置換では19mmをsupra annulus positionに移植する事が多い本邦におけるPPMの評価方法(圧格差をストロークボリュームで割った値が有用である、弁口面積、圧格差など単一的パラメーターでは正確な評価ができていない、臨床の経過と数値が位送還しないことがある)、三尖弁逆流の重症度診断と外科治療方法(エコーでのRV wall longitudinal strain, clinical functional staging、自己心膜ストリップでのspiral suspension、ロボットでのoverwrapping法)、自己心膜を使用した大動脈弁形成、いわゆるOzaki法の小児に対する妥当性(10歳以下では弁尖の変性が早い、ただしサルベージなoptionとして持っていても良い、弁尖接合の高さが高いため冠動脈閉塞のリスクもある→接合高さを低くしても良いのでは)、広範囲僧帽弁破壊を伴う感染性心内膜炎に対する、大きな自己心膜を使用した弁形成(交連をまたぐ僧帽弁破壊に対してPartial Normovalve technique)、エビデンスに基づいた予後予測が難しいからAIに予測してもらう→思考停止している?AIに予測される事の不安がある。アメリカから招待された外科医の講演で、自動翻訳で同時通訳表示されていたが、MICS CABGを混合キャベツと翻訳されていた、同時通訳で示される内容も理解不明であった→こんな混乱がAIにもありえるかもしれないなぁ、と不安になる。また、統括会長講演もとても印象的でした。人工心肺が開発、使用される以前に、単純低体温下に行った心臓手術の動画はとても興味深かった。
イノベーションとしてのロボット、MICS、内視鏡、カテーテル治療は話題性がある。医療経済、患者、医療従事者の人権問題、働き方改革などの大きなうねりの中で輝き続けるのだろうか(ここにもコストのカバー力≒国力)。10年、20年前に輝いていた心臓外科医も歳をとった。渋い風情だった。自分も老けた。牛タンの値段も上がった。ふと座った椅子の隣の席に学会の重鎮や昔の花形心臓外科医がいたりする。学会で見かけなくなった諸先輩はどうしておられるのだろうか?

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予定が立ちづらい、直前に予約をしなくてはならないから値段も上がる(ホテルも東京から仙台に向かう新幹線の中で予約したため安めのビジネスホテル、カプセルホテルは満室だった、なにわ男子の仙台公演で4万人が会場に集まった、仙台以外から多くの若者が街に溢れており、彼らとの宿泊先が競合した)し、結構な支出になるため学会に行くのを直前まで躊躇った。コロナ禍でのweb開催を経験して、現地にゆく労力、支出を思うとねぇ。だけど、現地を訪れてみると予想外の話が聞ける、人に会う、だから学会参加もやめられない。狭い視野、限られた経験の中の思考回路をリセット。
北から札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、南の博多まで人口100万人を越える都市で学会が開かれる事が多く、しばしば郡山、浜松、岡山、松山などでもある。都市を循環するが、朝8時からモーニングセミナーから夕8時までのイブニングセミナーに参加して会場とホテルの往復だ。意外と時間の余裕はない。観光名所やグルメなども楽しめそうだがそれもなんだか億劫だ。ビジネスホテルの朝食も個性がある時もあって面白い。学会のランチョンのお弁当も興味深い。牛タン3切れのおかずだった(仙台の牛タンはアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド産で、和牛より牛タン料理に向いている。和牛は脂肪多すぎるからね、和牛の牛タンも調理次第で美味しく食べられそうだが→動物愛護、ビーガンで牛肉も食べなくなるのだろうか 識別番号、写真、名前のついた牛肉は食べるのを躊躇う)。
円安、物価上昇、しつこいが牛タンの値段も上がった。観光目的ならばしっかり休みを取って目的意識を持って来たい。しかし、駅から学会会場に向かい、ホテルの会場の往復でも雰囲気を感じる。仙台は、駅から出るとやはり少し冷えた。夏が終わり短い秋が過ぎ、冬が近い。固まりが場所を変え人の話を聞くとほぐれる。

心臓血管外科

2023.11.01 Wed 14:29